朝7時から夜9時まで!聖嶺鳳学園・吹奏楽部の過酷な一日

聖嶺鳳学園には、数多くの部活動が存在します。
その中でも、最優秀賞や金賞の常連として学園内外に名を轟かせているのが、総勢86名の吹奏楽部です。
華やかな舞台、完璧にそろった演奏、客席から送られる惜しみない拍手――。
しかし、その裏側にあるのは、青春という爽やかな言葉だけでは到底ごまかせない、非常に過酷な練習の日々です。
今回は、そんな聖嶺鳳学園吹奏楽部の「授業がある日の一日」をご紹介します。
最初に結論だけ申し上げておきます。
「楽器を吹けたら格好いいかも」という軽い気持ちで入部すると、その考えは初日の朝7時に吹き飛びます。
7:00 音楽室集合・朝練開始吹奏楽部
聖嶺鳳学園吹奏楽部の一日は、朝7時から始まります。
ほかの生徒がまだ通学途中にいる時間、部員たちはすでに音楽室へ集合。
楽器の準備を済ませると、各自で個人練習を始めます。
眠そうにしている部員は、ほとんどいません。
正確には、眠くないのではなく、眠そうな顔をしている余裕がありません。
ロングトーン、音階練習、基礎練習、難所の確認など、取り組む内容はパートや個人によって異なります。
しかし、「朝だから軽めに」という考えは、この部には存在しないようです。
廊下には朝早くから管楽器の音が響き、音楽室周辺だけが一足先に完全起動しています。
なお、寝坊は論外です。
時計の針が7時を指した時点で楽器を構えているのが理想であり、7時に校門を通過した場合は、本人の中では間に合っていても、吹奏楽部の基準では遅刻に近いものとして扱われます。
8:20頃 ホームルーム直前まで練習
朝練は、ホームルームが始まる直前まで続きます。
終了の合図と同時に部員たちは楽器を片づけ、教室へ向かいます。
移動に許される時間はごくわずか。
朝から演奏技術だけでなく、素早い片づけ能力まで鍛えられます。
席に着いた直後にホームルームが始まることも珍しくありません。
一般の生徒にとっては、ここから学校生活の始まりです。
吹奏楽部員にとっては、すでに一仕事終えた後です。
午前 特権があっても授業は受ける
朝練を終えた部員たちは、そのまま午前の授業を受けます。
吹奏楽部にはAランカー以上の生徒が多く在籍しています。
Aランカーには、一日に好きな授業を一つ欠席しても授業態度の評価に影響しない特権があります。
朝から練習を続けているのですから、ここで特権を使って少し休憩してもよさそうなものです。
しかし、実際に利用する部員はあまり多くありません。
生真面目な部員が多いうえ、「授業を休んだことで練習に支障が出たと思われたくない」という意識も強く、ほとんどの部員が通常どおり授業を受けています。
演奏も勉強も手を抜かない。
聞こえは立派ですが、朝7時から活動している人々が選ぶ生活とは思えません。
12:30頃 昼休みの個人練習
昼休みになると、一部の部員は音楽室へ戻り、個人練習を行います。
この時間の練習は強制ではありません。
昼食を取る、友人と過ごす、教室で休むなど、各自の判断に任されています。
つまり、吹奏楽部の一日の中では貴重な「練習しなくても怒られない時間」です。
とはいえ、大会が近い時期や、朝練でうまく演奏できなかった箇所がある場合は、自主的に音楽室へ向かう部員が増えます。
あくまで自主練習です。
周囲が練習していても、休んで構いません。
本当に構いません。
多少の罪悪感に耐えられるのであれば。
昼食後の音楽室では、それぞれが自分の課題と向き合います。
短時間ながら、朝の練習で見つかった問題を修正する大切な時間でもあります。
一方で、昼休みにしっかり休み、放課後の長時間練習に備える部員もいます。
むしろ一日を乗り切るためには、こちらの判断も重要なのかもしれません。
午後 普通に授業を受ける
昼休みが終わると、午後の授業が始まります。
朝から何時間も楽器を演奏していたとしても、授業中に居眠りをすれば当然注意されます。吹奏楽部員であることは、眠気に対する免罪符にはなりません。
部員たちは授業を受けながら、放課後の練習に備えます。
指先を酷使するパートの生徒は休み時間に手をほぐし、呼吸が重要なパートの生徒は体調を整え、打楽器パートの生徒は机を指でたたき始めます。
最後の行為については練習なのか癖なのか、本人以外には分かりません。
放課後 聖嶺鳳ゲームの通知を確認
授業終了後、部員たちはスマートフォンに届いた通知を確認します。
聖嶺鳳ゲームの参加者に選ばれていた場合は、部活動よりもゲームへの参加が優先されます。
通知を無視することはできないため、該当する部員は練習を離れ、指定された場所へ向かいます。
参加者に選ばれなかった部員は、そのまま放課後練習に突入します。
「今日はゲームに呼ばれなかった。よかった」
そう安心する一般生徒もいるでしょう。
吹奏楽部員の場合は、ここから夜9時まで練習できます。
果たしてどちらが安全なのかは、意見が分かれるところです。
放課後前半 パート練習
放課後は、木管、金管、打楽器など、それぞれのパートに分かれて練習を行います。
音程、リズム、息の使い方、音の立ち上がり、強弱、他パートとのバランス――確認される項目は非常に細かく、一音ごとに修正が加えられます。
「だいたい合っている」は、ここでは「合っていない」と同じ意味です。
指示された箇所を演奏し、問題があれば止める。
修正して、もう一度演奏する。
それでも合わなければ、再び止める。
数小節を完成させるために、長い時間を費やすこともあります。
同じ部分を何度も繰り返すため、練習後には楽譜を見なくても演奏できるようになる部員も少なくありません。
それは暗譜したというより、音が頭から離れなくなった結果かもしれません。
体力練習 楽器を置いてグラウンドへ
毎日ではありませんが、演奏練習の合間に体力づくりが行われることもあります。
グラウンドを走ったり、呼吸を意識したトレーニングを行ったりと、その内容は運動部を思わせるものです。
吹奏楽は座って演奏するだけ、という認識は通用しません。
長時間安定して演奏を続けるには、姿勢を支える筋力、集中力、そして十分な肺活量が必要です。
特に管楽器の演奏では、呼吸の乱れがそのまま音に表れます。
グラウンドを走り終えた後に待っているのは、休憩ではありません。
楽器です。
部員たちは音楽室へ戻り、何事もなかったように練習を再開します。
全体合奏 第三体育館に全パート集合
放課後の練習では、必ず最低一回、すべてのパートが第三体育館に集合します。
86名の部員がそろい、全体での合奏を行うためです。
指揮台に立つのは、吹奏楽部部長の白石ユキノ。
3年生の女子生徒で、学園内でも上位に位置するSランカーです。
部長であると同時に指揮者を務め、全部員の演奏をまとめています。
白石部長が指揮棒を上げると、体育館の空気が一変します。
それまで雑談していた部員も姿勢を正し、視線を指揮台へ集中させます。
演奏が始まれば、たった一つのミスでも見逃されません。
音程がわずかにずれた。
入りがほんの少し遅れた。
音が必要以上に強かった。
その瞬間、周囲の部員が一斉に反応します。
誰も言葉を発していないのに、「今の音は誰?」という視線だけが飛んできます。
86名の耳が、一つの音を探してこちらを向く。
慣れていない部員にとって、そのプレッシャーは相当なものです。
ミスをした本人は、次の演奏で同じ失敗を繰り返さないよう、必死に楽譜と指揮を確認します。技術だけでなく、精神力も要求される時間です。
完璧な演奏が生まれた瞬間
厳しい空気の中で進む全体合奏ですが、決して失敗を責めることだけが目的ではありません。
すべてのパートの音程が重なり、リズムがそろい、白石部長の指揮どおりに一つの楽曲が完成した瞬間、体育館の空気は大きく変わります。
演奏が終わった直後、部員たちの間に笑顔が広がります。
普段は厳しい上級生も、何度も同じ箇所を注意されていた下級生も、この瞬間だけは同じ達成感を共有します。
全員が納得できる音を作り上げたときの喜びは、それまでの疲労や緊張を忘れさせるほど大きなものです。
その完璧な演奏をもう一度再現するため、少し休憩した後に再び最初から演奏します。
感動の余韻は、意外と短めです。
21:00 練習終了
練習は夜9時まで続きます。
朝7時から数えれば、部員たちは授業を挟みながら、実に14時間ものあいだ学園内で活動していたことになります。
練習終了後は楽器を手入れし、譜面台や椅子を片づけ、翌日の予定を確認します。
21時になった瞬間に帰れるわけではありません。
最後まできちんと片づけを終え、音楽室を元の状態に戻して、ようやく一日の活動が終了します。
そして翌朝7時には、再び朝練が始まります。
楽器も休ませる必要がありますが、人間にも休息が必要です。
吹奏楽部の皆さんには、帰宅後できるだけ早く眠っていただきたいところです。
生半可な覚悟では続かない
聖嶺鳳学園吹奏楽部は、入部希望者を簡単に追い返すような部ではありません。
しかし、練習についていけるかどうかは別の問題です。
早朝から始まる個人練習、授業との両立、夜まで続くパート練習と全体合奏。
そして、一度のミスに全員が反応するほど張り詰めた空気。
「楽しそうだから」
「制服姿で楽器を持ったら格好よさそうだから」
「友達に誘われたから」
その程度の気持ちだけで入部した生徒の多くは、現実を知った後、静かに退部届を提出しています。
退部を申し出た生徒を無理に引き止めることはありません。
去る者を追う時間があるなら、基礎練習をします。
実力とSSPランク
吹奏楽部では、部活動そのものにSSPランクによる入部制限はありません。
Aランカー以上の部員が大半を占めていますが、Aランカー未満の生徒も在籍しています。
ただし、部内にはSSPランクと演奏技術の両方を重視する傾向があり、低ランクで演奏技術も十分でない部員は、周囲から厳しい目を向けられることがあります。
明確な規則ではないものの、部員の一部にはランクによる差別意識が残っているのも事実です。
低ランクであっても、圧倒的な演奏技術を見せれば評価されます。
反対に、高ランカーであっても演奏を間違えれば、容赦なく全員が反応します。
音楽は、SSPだけではごまかせません。
もっとも、実力が乏しく、ランクも低い生徒にとっては、非常に居心地の悪い環境になる可能性があります。この厳しい風土は強さの理由である一方、吹奏楽部が抱える問題の一つともいえるでしょう。
音楽系の聖嶺鳳ゲームでは無類の強さ
吹奏楽部員たちは、演奏技術だけでなく、音楽に関する豊富な知識も身につけています。
楽典、作曲家、楽器の構造、音楽史、演奏記号、楽曲分析など、彼らにとっては知っていて当然とされる分野です。
部員同士で音楽について話す際も、基礎知識があることを前提に会話が進みます。
そのため、聖嶺鳳ゲームで音楽を題材とした競技が開催された場合、吹奏楽部員は圧倒的な強さを発揮します。
これまでにも音楽に関するゲームは複数回開催されていますが、参加した吹奏楽部員は、そのたびに全員クリアしています。
ほかの生徒が問題文を読んでいる間に答えが分かり、出題者の表記ミスまで指摘する。
そこまで含めて、聖嶺鳳学園吹奏楽部です。
彼らに音楽知識で勝負を挑む場合は、相手が悪かったと思って諦めましょう。
最優秀賞の裏にあるもの
聖嶺鳳学園吹奏楽部は、コンクールで最優秀賞や金賞を受賞する超強豪です。
将来、プロの演奏家を目指している部員も多く、卒業後も音楽の道へ進む生徒が少なくありません。
しかし、その実績は才能だけで生まれたものではありません。
朝7時から始まる練習。
授業と部活動の両立。
夜9時まで続く合奏。
一音のミスさえ見逃さない緊張感。
そして、全員が納得するまで演奏を繰り返す執念。
華やかな受賞歴の裏には、部員一人ひとりの膨大な努力があります。
音楽が好きというだけでは、続けられないかもしれません。
厳しい指導を受けても、失敗しても、それでもなお楽器を手に取り、より良い音を追い続けられる者だけが、この部に残ります。
生半可な覚悟では続かない。
けれど、86名の音が完璧に重なった瞬間に得られる喜びは、ここでしか味わえません。
あなたが聖嶺鳳学園の生徒だったら、この吹奏楽部に入部したいと思いますか?
なお、見学だけであれば歓迎されています。
朝7時集合ですが。

